重量を求めてトレーニングをしている人にとって「自己ベスト更新」というのは大きなゴールともいえるかもしれません。ただ、やり方次第では日々の練習でも自己ベストが更新できるとしたらどう思いますか?
いますぐ教えろ!
この記事では重量設定の考え方を改めることで必然的に自己ベスト更新を連発できるようになるトレーニング方法を紹介します。
- BIG3 Total 525kg
- ベンチプレスのMAX 135kg
(14ヵ月で +55kg)
ベンチプレスで実際に高頻度でPR更新/MAX更新した例
まずは実際の私のトレーニング記録を例に徐々にイメージを掴んでいってもらいます。種目はベンチプレスに絞って紹介します。
期間 | 12/7- 1/31 |
練習頻度 | 9回/月 |
PR更新回数 | 18回 |
実際のトレーニング記録を紹介
12/5に1repの自己ベストを更新したので、新しい1RMをもとに全9回のプログラム×2サイクルで18日分のトレーニングを計画しました。プログラムの最中で更新したPRを以下の表にまとめています。
12/5 | T&G ×1 | 1/7 | Comp ×3 |
12/14 | T&G ×5 Comp ×1 | 1/13 | Larsen ×4 Larsen ×3 |
12/23 | T&G ×4 Comp ×1 | 1/16 | T&G ×6 Comp ×2 Comp ×3 |
12/26 | T&G ×6 | 1/19 | T&G ×4 Comp ×1 |
12/29 | T&G ×3 | 1/22 | Larsen ×5 |
1/1 | T&G ×2 | 1/25 | T&G ×5 |
- Touch&Go: 胸に触れたら上げる(止めなし)
- Competition: 試合形式 (止めあり)
- Larsen Press: 足上げ
止めありや足上げのベンチプレスはやっていない方も多いと思うので省いたとしても、通常のベンチプレスだけで9回は自己ベストを更新していることになります。ちなみに足上げベンチプレスも優秀な補助種目なのでぜひ試してみてください。
更新した自己ベストの種類を整理
私がプログラムの中で更新したPRについて整理してみます。
- 1RMのPR挑戦は2か月に1回のみ
- 複数RMのPR更新が中心
- 派生種目のPR更新にも挑戦
なんか思ってたんと違う
ぐんぐん1RMが伸びる魔法ではなく、あくまでもPRを高頻度で更新できるトレーニングの仕方です。
まずは1.5ヵ月~2ヵ月くらいは自己ベストが変わらない状態を受け入れる「メンタルの強さ」を手に入れましょう。自分の弱さを受け入れられるのは強さです。
【補足】
トレーニング歴が1年未満の人に関しては成長速度が速いのでこのやり方はおすすめしません。ある程度、トレーニング歴があり、伸び悩みを感じている人を対象としています。目安には以下の記事も参考にしてみてください。
更新した自己ベストのRMを計算
止めなしのベンチプレスに絞って実際に更新したPRとその1RM換算値をまとめます。
日付 | 回数 | 重さ | 1RM換算 |
---|---|---|---|
12/5 | 1rep | 130kg | 130kg |
12/14 | 5rep | 110kg | 123.8kg |
12/23 | 4rep | 115kg | 126.5kg |
12/26 | 6rep | 107.5kg | 123.6kg |
12/29 | 3rep | 120kg | 129kg |
1/1 | 2rep | 122.5kg | 128.6kg |
1/16 | 6rep | 110kg | 126.5kg |
1/19 | 4rep | 117.5kg | 129.3kg |
1/25 | 5rep | 115kg | 129.4kg |
RM計算には以下も活用してください。
1回も130kgいってない!嘘つき!
実はRM計算の概念を拡張することがポイントです。
2ヵ月で18回のトレーニングをしてもRM換算値は1度も1RMの130kgを超えていません。ただ、手を抜いていたわけではなく実際にどの記録も私の自己ベストでした。ベスト更新の概念を改めることが高頻度で自己ベストを更新するためのポイントになってきます。
おさらい
- 1RM更新は2か月で1回のみ
- 更新連発は複数repや派生種目
- RM換算値は1度も実際の1RMを超えていない
筋トレのRM計算に精度を入れて拡張する
RM計算の考え方は多くの人が理解していると思います。ただ、私はRM計算には精度や速度の概念も加えるべきだと思っています。
【補足】
一流の競技者の中ではバーの速度を計測しながらのトレーニングが主流になりつつあります。速度次第でその日の調子を見極めてトレーニングメニューを調整します。
重さと精度の関係を考えてみる
ざっくり重さと精度の関係をグラフ化してみました。重量が上がっていくと精度が下がってくるイメージです。これについては日々のトレーニングのなかで実感されているのではないかと思います。
ただ、同じ重量だったとしても精度は毎回バラツキます。また、自分の限界に近付いてくるほど精度のバラつきは大きくなってくるはずです。自己ベストに挑戦しようとしたらいつもと全然違う場所に降ろしてしまったなんてことはあるあるですよね。
精度を考慮しなかった場合は?
例えばちょっとズルをして雑な5repでPRを更新した人がいたとします。この人はRM換算で精度の低い100kgを手にしました。
90kg×5repだから100kg上がるはず!
先ほどのイメージで考えてみると全体的に精度が下がったような構図になります。100kgではバラつき次第では精度ゼロになるような状態ですね。よっぽど上ブレしないと100kgは成功しません。つまり半分は博打でMAX更新に挑戦している状態です。
バラつきを考慮して重量設定する
高頻度で自己ベストを更新し続けるためにはバラつきを含めても失敗しないような重量設定が必要不可欠です。そのために私は以下の2点を心がけています。
- 1repのPR測定であまり粘らない
(2.5kgくらい毎回余裕を持つ) - 練習は常に1ランク丁寧さをあげる
自己ベストを80kg⇒130kgまで伸ばした1年間で練習も含めて1度も潰れていません。
1repのPR測定であまり粘らない
実は12/5に130kg 1repのPR更新をした時点でも若干の余力を残していました。97.5%の力で1repのMAX更新を行うイメージです。激粘りしてフォームも崩れた1rep MAXでプログラムを組んでしまうと怪我のリスクも高まりますし、次回のMAX更新の可能性も下がります。
【補足】
ここで余力を残しておかないと、プログラム途中で120kg×3rep (1RM: 129kg相当)のようなギリギリの重量設定を失敗するリスクが高まります。
練習は常に1ランク丁寧さをあげる
練習では1rep MAXの挑戦時よりも常に1ランク丁寧さを上げて行います。具体的には速度を変えます。これをやろうとするとどうしても1RMの換算値は少し低めになってしまいます。
降ろしの速度 | 若干遅め |
挙上の速度 | できるだけ早め |
再度、先ほどのイメージを使うと常に精度高めで余力を持ち続けていることを意味しています。多少の下ブレがあっても失敗しない状態を作り、自己ベストの更新を続けるためです。
【補足】
常にRPEに1つ余裕を持つとも言えるかもしれません。以下も参考にしてみてください。
おさらい
- RM計算に精度の概念を加える
- 常に丁寧さを高めた練習を行う
- 下ブレがあっても失敗しない重量設定をする
ベンチプレスなどの筋トレで高頻度でPR/MAX更新するための重量設定の目安
そんなこといきなり言われてもできんて
読んでくれているあなたの状況に合わせて考えやすいように少しずつ一般化していきましょう。
どのくらいの重量設定をすべきか
私のトレーニング記録をもとに重量設定の目安を考えていきます。12月頭の時点で自己ベストは+10kgされています。それまではRM換算120kg以下のトレーニングをしてきているのでRM換算値としても10kgは余裕があることになります。
1rep ベスト | 想定の余力 | |
---|---|---|
9月頭 | 120kg | +2.5kg |
12月頭 | 130kg | +1.25kg |
このときに一気に余力を使い果たさないことが重要です。私の場合はこのあとに2サイクルでプログラムを組んでいたので複数repのPR更新も2回に刻んで行いました。
推定の 1repベスト | 複数repの 換算目標 | |
---|---|---|
12月の練習 | 131.25kg | ~125kg |
1月の練習 | 132.5kg | ~128kg |
12月の練習はスピード重視でやればもう少し挙げられるところをできるだけ精度向上に注力して練習しているわけです。調子が悪いときでも少し速度を戻せばMAX更新は可能です。
重量設定の具体的な手順
あなたがもし「同じようなやり方で重量設定をしよう」と思っているのであれば以下のようなプロセスを踏んでください。
少しは粘り始めたけど、ほとんどバーが止まっていないくらいの重さをこれからの1rep MAXとしてみましょう。
- 2~6rep MAXを記録している人は一旦、忘れてリセットしましょう
再定義した1rep MAXから-5kgくらいを狙って2~6rep MAXに挑戦していきます。設定した重量で最大限に速度を落としてバーを下ろすようにしてください。
再定義した1rep MAXから-2.5kgくらいを狙って2~6rep MAXに挑戦していきます。設定した重量でやや速度を落としてバーを下ろすようにしてください。
【補足】
私の場合は531プログラムをやりつつrep MAXに挑戦しています。
2~6repの重量目安の計算ツール
上記のプロセスでSTEP2とSTEP3を行うための重量の目安を計算してくれるツールを作成しました。重量次第ではあまり差がつかないので小数第1位まで表示しています。
そこまで高くないので1kg単位で重量を調整できるプレートを買ってしまうというのも1つの手です。一気に2.5kg更新するというのはレベルが高い場合が多いからです。
例えばMAXが80kgの人の場合はrep MAXの目安が1.5kgくらいしか離れていません。MAXが130kgだとちょうど2.5kg刻みになります。重量が扱いにくい種目や女性の場合はこの傾向が特に顕著になります。
\ MAX 80kgの場合/
\ MAX 130kgの場合/
重量設定に精度も考慮してPRを更新するやり方の効果/注意
高頻度でPRに挑戦する効果
効果は主に2点です。
- 練習への意気込みが変わる
- 精度のバラつきが減ってくる
練習への意気込みが変わる
このやり方では毎回が練習ではなく本番になります。どんなにハードルを下げて成功確率を上げているとは言え、「自己ベストへの挑戦」です。トレーニングへ向かうモチベーションがいままでとは変わってきます。毎回、本気のアップをしましょう。
毎日、自分史上最強!
精度のバラつきが減ってくる
速度をコントロールした練習を繰り返していくと精度のバラつきは減ってきます。結果的に発揮できる筋出力も安定するので計算通りにMAX更新がしやすくなってきます。
高頻度でPRに挑戦する注意点
このやり方を行う上では以下の3点に注意してください。
- どこまで欲をコントロールできるか
- どこまで調子をキープできるか
- デッドリフトなどは少し難しい
どこまで欲をコントロールできるか
「できるだけ重い物をあげたい」という欲です。トレーニングを質量×回数で考えるのは大事ですが、そこには速度の概念が含まれていないことを忘れてはいけません。数字に表れている部分だけに囚われず、トレーニングの質にコミットしましょう。
エゴを捨てる!結果にコミット!
どこまで調子をキープできるか
トレーニングを続けて仮に筋肉量が増えていったとしてもコンディションが下がっていくと自己ベストの更新は連発できません。コンディションとは食事や睡眠、体の可動域など多くの要素が含まれます。毎回、1rep MAXの更新に挑戦するつもりでよい準備をしておきましょう。
デッドリフトなどは少し難しい
この考え方は挙上スピードをコントロールしやすいベンチプレスやスクワットで有効です。デッドリフトをゆっくり挙げるというのはなかなか大変なので、完全には活用できません。
まとめ
高頻度で自己ベスト更新を連発するためのトレーニングの考え方の例を紹介しました。
- 基本方針
「質の高い練習を継続する」 - どうやって実現する?
- 重量を1段階下げる
- 速度をコントロールする
- 自己ベストの概念を変える
(ゴールではなく日々のノルマ)
- 得られる効果は?
- モチベーション向上
- 精度のバラつき低下
- ほどよい緊張感
- 注意点は?
- 無茶をしない
- コンディションを落とさない
ざっくりまとめてしまうと「いい準備して質の高い練習を継続してね」ということです。ただ、当たり前のことを当たり前にこなすのが1番難しいので、「その状況を意図的に作り出すには?」という考えのもとにこのようなトレーニング方法に至りました。参考になれば嬉しいです!
- 考え方を押し付けたいわけではないので大前提として楽しくトレーニングしてくださいね!