今年も世界クラシックパワーリフティングが開催されます。昨年は日本選手の活躍も目立ち、大いに盛り上がりました。蛯原さんがDL第3を引けば日本人初のクラシックでの金メダルという状況に心躍らせたパワーリフターも多かったのではないでしょうか。
- 蛯原さん 59kg級 2位
- 牛山さん 66kg級 3位
- 渋谷さん 66kg級のSQ日本記録 など
※現在、66kgのSQ日本記録は井戸さんに更新されています
今年の出場選手を事前に確認しておいて試合観戦をたっぷりと楽しみましょう!なお、昨年度の大会情報は以下の記事でまとめていますので、振り返りにもご活用ください。
世界クラシックパワーリフティング 2023の大会概要
基本情報
2023年の世界クラシックはマルタで開催されます。地中海に面しており、夏場は乾季なので日本の梅雨に比べると過ごしやすい気候となることが想定されます。
日程 | 6/11- 6/18 |
場所 | マルタ (セントジュリアンズ) |
緯度 | 北緯35度5分 (埼玉くらい) |
出場予定選手 | 男子:222人 女子:180人 (Nomination時点) |
国内の選考を勝ち抜いた選手が出場
世界クラシックパワーリフティングへ出場するためには国内の予選を勝ち抜く必要があります。日本で言うと3月に行われた ジャパンクラシックパワーリフティング (JCP) がそれに該当します。
- 出場選手
⇒ Nomination list - 審判/コーチ
⇒ Entry list
参加者リストの英語表記は選手は Nomination (推薦)された人であり、審判やコーチは Entry (参加表明)した人というように明確に扱いを分けられていました。
【補足】
現実問題としては勝ったから全員が出るわけではなく、出場は個人の判断に委ねられます。アマチュアスポーツで基本的に自費(数十万単位)なので、人によって出場目的も異なります。
- 国際舞台の経験として
- 場所が良ければ出場
- メダルを目指して出場
- 世界記録の認定を目指して など
試合スケジュール
試合のスケジュールはIPFより公開 ( PDFをダウンロード)されています。詳しくは公式情報をチェックしてください。検量時間や2部制の場合のタイムテーブルも記載されています。
6/11 | 男子59kg級 女子47kg級 女子52kg級 |
6/12 | 男子66kg級 女子57kg級 |
6/13 | 女子63kg級 男子74kg級 |
6/14 | 試合なし |
6/15 | 女子69kg級 男子83kg級 |
6/16 | 女子76kg級 男子93kg級 |
6/17 | 男子105kg級 男子120kg級 女子84kg級 |
6/18 | 女子84+kg級 男子120+kg級 |
大会は登録者 984万人のオリンピック公式チャンネルでライブ配信されます。以下は日本時間で記載しており、YouTubeのリンクになっています。
66kg級 牛山恭太 / 佐竹優典さん
66kg級には以下の2人が出場されます。
- 牛山恭太さん (Nomination 2位)
- 佐竹優典さん (Nomination 5位)
牛山恭太さん
Ushiyama Kyota
(Nomination 2nd Place)
SQ:240kg
BP:172.5kg
DL:300kg
Total:712.5kg
YouTubeチャンネル パワーチューブ のメンバーであり 66kgでJCP 2連覇、現日本記録保持者という選手です。昨年の世界クラシック、今年3月のSBD Sheffieldと本人的には悔しい思いをしてきているはずなので、3度目の正直での世界一を狙っています。
佐竹優典さん
Satake Yusuke
(Nomination 5th Place)
SQ:240kg
BP:157.5kg
DL:265kg
Total:662.5kg
昨年のワールドゲームズで世界一になった選手です。フルギアの全日本選手権では7度の優勝を誇ります。選考記録になっているJCPの結果では SQ第3 / DL第3 でどちらも日本記録に挑戦して失敗しているので、当日は記録を伸ばしてくる可能性が十分にあります。
準オリンピックのような位置付けの大会です。オリンピック同様に4年に1度おこなわれ、パワーリフティングではフルギアのみが行われています。
世界記録以上の選手が3人
66kg級の見どころはなんといっても「世界記録以上が持ち記録の3人が揃う」ことです。かなりのハイレベルな闘いが予想されます。
- Senumong Kasemsand 710.5kg
- Ushiyama Kyota 712.5kg
- Le Brian 713.5kg
昨年の世界クラシックではベンチプレスが強いことで有名な Berglund Eddie がTotal 710kg (当時の世界記録)で優勝しています。その後、Kasemsand選手が世界記録を塗り替え、さらに非公式ながら世界記録を上回る選手が2人も出てきたという状況です。
66kg級の記録についてはパワーチューブさんの動画のなかでも紹介されています。
74kg級 渋谷優輝さん
74kg級には渋谷さんのみが出場されます。
- 渋谷優輝さん (Nomination 15位)
※JCPで優勝した宇都木さんは開催地が遠いことや現時点では優勝の可能性が低いことなどから参加を見送ったとバーベルラジオで話していました。
渋谷優輝さん
Shibuya Yuki
(Nomination 15th Place)
SQ:275.5kg
BP:170kg
DL:257.5kg
Total:703kg
昨年の世界クラシックでは 66kg級のSQ日本記録を、今年3月のJCPでは83kg級のSQ日本記録を樹立した選手です。今回は 74kg級でテイラーアトウッドが持つ 283kgの世界記録更新を狙っての参加のようです。同時に比嘉さんが持つ282.5kgの日本記録も更新することになりますので大いに期待がかかります。
SQの世界記録争いが予想される
74kg級の見どころの1つは「SQ世界記録争い」です。現世界記録保持者のテイラーアトウッドに加えてNominationの時点で以下のような選手が世界記録を狙ってくると予想されます。
- Shibuya Yuki 275.5kg
- Tobias Mark 280kg
- Fastelli Denis 280kg
- Day Steven 285kg
最近、ついにSBDが新型ニースリーブの発売を公表しましたが、Inzerのエルゴプロを代表とする高反発ニースリーブ の存在もあってか、SQの記録は全体的に上がってきているのでおそらく誰かが更新してくるはずです。
渋谷さんのコンディションはStrengthGymTokyoBayのYouTubeチャンネルからチェックできます。
83kg級 堀口耀介さん
83kg級には堀口さんのみが出場されます。
- 堀口 耀介さん (Nomination 35位)
堀口耀介さん
Horiguchi Yosuke
(Nomination 35th Place)
SQ:222.5kg
BP:180kg
DL:232.5kg
Total:635kg
フルギア 105kg級でBP 292.5kgの日本記録を持つ選手です。2016年にはフルギア Jr. 93kg級で世界一にも輝いています。世界大会の経験もあり、浦和高校 / 青山学院大学のパワーリフティング部出身とかなり歴が長く経験豊富な選手のため、今回も本来の実力を発揮してくれるのではないでしょうか。
オルヒ超えなるか?
83kg級の見どころの1つは「Wallace Delancyはオルヒ超えの世界記録を出すか」です。昨年の83kg級の覇者であるWallace Delancyは3月に行われた SBD Sheffieldでは835kgの自己ベストを出して世界記録まであと6kgのところまで迫りました。
世界記録 | 841kg |
自己ベスト | 835kg |
昨年の世界選手権 | 802.5kg |
昨年の世界選手権と比較すると +32.5kgの伸びです。SBD SheffiledのDL第3では337.5kgに挑戦しており成功すれば 842.5kgの世界記録というところでの失敗でしたので本当にあと1歩のところまで来ています。
93kg級 武田裕介さん/照沼直樹さん
93kg級には以下の2人が出場されます。
- 武田裕介さん (Nomination 20位)
- 照沼直樹さん (Nomination 27位)
武田裕介さん
Takeda Yusuke
(Nomination 20th Place)
SQ:285kg
BP:207.5kg
DL:282.5kg
Total:775kg
ノーギア重量級でのレジェンド的存在です。過去には旧階級100kg~新階級105kgを11連覇しています。その後、93kg級に転向してJCPを3連覇中です。Totalでは93kgおよび105kg級の日本記録保持者です。本人の93kg級のDLベストは300.5kgのため今回の世界選手権でさらにTotal日本記録を塗り替えてくる可能性も十分にあります。
照沼直樹さん
Terunuma Naoki
(Nomination 27th Place)
SQ:280kg
BP:185kg
DL:300kg
Total:765kg
2019年のJr時代にはアジアで3位になっている選手で、昨年のとちぎ国体の93kg級王者です。93kg級では鶴屋史門さん、中村鮎人さんと同じ1997年生まれの比較的若い選手であり、昨年に続いて2年連続での世界クラシック出場です。JCPでは9本中4本取りだったため、どのような重量選択をしてくるのかもキーポイントになりそうです。
【補足】
JCPの93kg級のスクワットでは第2から日本記録の更新をする重量申請があり、第3でも大会前の日本記録以上に挑戦する選手が4人いたのでかなり白熱していました。その後、5月の東海大会でSQ日本記録はさらに更新されて300kgになっています。
超絶ハイレベルなTOP4にも注目
93kg級は先に紹介した 66kg級 に負けず劣らず上位の混戦が予想されます。現世界記録の884kgから7kg差のなかに4人がひしめき合う状態です。
Cayco Jonathan | 884kg |
Hedlund Gustav | 880kg |
Adin Gavin | 880kg |
Krastev Emil | 877.5kg |
また、Adin Gavin や Krastev Emilは3月のSBD SheffiledでCayco Jonathanに敗れていますのでリベンジにも燃えているのではないかと思います。
69kg級 岡田有加さん
69kg級には岡田有加さんのみが出場されます。
- 岡田 有加さん (Nomination 21位)
岡田有加さん
Okada Yuka
(Nomination 21th Place)
SQ:150kg
BP:82.5kg
DL:190kg
Total:422.5kg
世界クラシックの出場経験も2度あり、JCPも複数回の優勝を誇る選手です。デッドリフトが強いのが持ち味で、今年3月のJCPの第3試技では失敗ながらも200kgに挑戦しています。女子69kg級はNominationの28人中の14人が200kg以上を持ち記録にしているのでそのなかで自分の殻を破ってぜひ200kgの大台へと足を踏み入れてほしいです。
世界記録の更新にも注目
女子 69kg級の注目はなんといっても「Bavoil Prescilliaの世界記録更新」です。3月のSBD Sheffieldで自身の持つ69kg級の世界記録を更新した選手ですが、実は63kg級の世界記録保持者でもあります。
63kg級 | 556.5kg |
69kg級 | 548.5kg |
63kg級で556.5kgを出しているので69kg級でもまだまだ記録を伸ばしてくる可能性が高いです。ちなみに63kg級での記録は IPF GLポイント で 120を超えており、クラシックパワーリフティングだと世界に2人しかいないレベルです。
※もう1人は女子 84kg級のLawrence Amandaです。間違っていたらすみません。
84+kg級 佐藤南さん
84+kg級には佐藤南さんのみが出場されます。
- 佐藤南さん (Nomination 13位)
佐藤南さん
Satoh Minami
(Nomination 13th Place)
SQ:195kg
BP:92.5kg
DL:180kg
Total:467.5kg
84+kg超級でSQ/DL/Totalの日本記録を持つ選手です。3月のJCPでは初出場ながら3つの日本記録を出して初優勝されました。佐藤さんの競技歴はまだ3年であり、JCPでも練習ベストは出せていなかったようなので大舞台でさらに日本記録を更新してくれることを期待しましょう。
【補足】
ちなみに佐藤さんは JCPでのニースリーブ使用率調査で唯一、着用していなかった選手です。(本サイト調べ)
DL歴代最高重量にも期待
個人的に84+kgの見どころは「女子のDL歴代最高重量がでるか」どうかです。Nomination 7位のLaalaai Natalie選手は選考記録は255kgですが、今年の4月に非公式ながら 270kgを成功 させています
現女子歴代最高 | 268.5kg |
700ポンド | 272.155kg |
270kgを成功させると女子のDL歴代最高記録を塗り替えることになり、さらに272.5kgを成功させるとIPF管轄内では女子史上初の700ポンド超えのDLとなります。
【補足】
SQではBrown Bonicaが280kgの世界記録を持っています。
まとめ
6/11- 6/18にマルタで開催される世界クラシックパワーリフティングについて大会概要、日本からの出場選手、個人的な見どころをまとめました。日本からの参加者は以下の8名です。
- 牛山恭太さん (66kg)
- 佐竹優典さん (66kg)
- 渋谷優輝さん (74kg)
- 堀口耀介さん (83kg)
- 武田裕介さん (93kg)
- 照沼直樹さん (93kg)
- 岡田有加さん (69kg)
- 佐藤南さん (84+kg)
こうしてみると武田さん/佐竹さんをはじめとする TXP勢 や 渋谷さん/照沼さんが所属するStrength GymTokyoBayなどパワージムの方が目立ちますね。近くに住んでいる方は一度見にいってみてもよいかもしれません。
それでは日本選手の活躍をみんなで応援しましょう!