本記事ではパワーリフティングの強さを比較するスコアについて紹介します。


え?まじで?
本記事を読んで一緒にスコアの歴史を学んでいきましょう!
本記事で分かること
世の中にあるスコア一覧
2018年以降のスコアの変遷
一般人が使うには?
スコアの歴史を知るとBIG3がもっと楽しくなるかもしれません!
世の中のスコア一覧
パワーリフターの強さを比較するスコアには以下のようなものがあります。
- Wilks points
- 相対筋力スコア
- IPF points
- Wilks 2.0
- DOTS Method
- IPF Good Lift points
歴史で言うと以下のようなイメージです。



その翌年の2018年にIPFスコアが登場してからここ4年くらいの間にいろいろと新しいスコアが生まれました。
本記事ではこれらを時系列に沿って紹介していこうと思います。
- ~2018年ウィルクススコアの終わり長かったウィルクススコア時代
- 2018~2019年IPFスコアの誕生突如、現れたIPFスコア
- 2020年〜IPFスコアの改良すぐに変わってIPF GLが登場
※年はざっくりです。
ウィルクススコアの課題
パワーリフティングの世界では長きにわたってウィルクススコアが使われてきました。
ウィルクス係数 × 合計挙上量で求められます。
このスコアが作られた背景には、
- 異なる階級のリフターたちを比較して、どちらが優れたリフターなのかを決めたい
という考えがあります。
リフティングはボクシングのようなものですから、ライト級(59kg)とヘビー級(90kg)の選手を直接、殴り合いさせるにはいかないわけです。

そこで使われていたのが、このウィルクススコアです。
ただ、この方法にもいくつか問題点があったため、2018年には新しい物に置き換わりました。
問題点は主に4つです。
- データが古い
- 女性のデータが少ない
- 競技別にスコアが分かれていない
- 中量級に不利である
データが古い
1988年~1994年のデータを用いています。
女性のデータが少ない
1988年~1994年のデータでは女性の競技者が少なかったため、正確性に欠けます。
競技別にスコアが分かれていない
以下の2つについて言えます。
- フルギア/ノーギアが分かれていない
- シングルベンチプレス向けにスコアが分かれていない

フルギア/ノーギア
フルギア/ノーギアの係数は分かれていないのでフルギアでは単純に高いスコアが出ます。
また、ノーギアでフルギアと同じ重量をあげても同じスコアが出てしまいます。
ノーギアで500kgあげた ⇒ 374.6
ノーギアで600kgあげた ⇒ 449.6
フルギアで600kgあげた ⇒ 449.6
シングルベンチプレス
シングルベンチプレス向けにも係数は分かれていません。
・体重 70kgのパワーリフターが
ベンチプレス150kg ⇒ 112.4
・体重 70kgのベンチプレッサーが
ベンチプレス150kg ⇒ 112.4
同じ体重でも上半身に筋肉を割り振ることができるため、よりハイレベルな戦いとなります。

中量級に不利である
ウィルクススコアのイメージ図を書くと以下のようになります。

線図がU字になっているということは真ん中の中量級の方々はスコアが低めに出てしまうということを意味しています。
IPFスコアの登場
ウィルクススコアの課題を整理すると
- 最新データをもとに近似曲線を作り直したい
- 女性のデータを増やしたい
- 種目別に係数を分けたい
- 中量級への不利さを改善したい
ということになります。
IPFスコアは上記の課題に加えて
- トップリフターだけではなく、すべてのレベルのリフターも使える指標にしたい
という想いのもと作成されました。
実際の数式は以下のようになります。

C1, C2, C3, C4は定数ですが
- フルギア 3種目 (男性)
- フルギア 3種目 (女性)
- ノーギア 3種目 (男性)
- ノーギア 3種目 (女性)
- フルギア ベンチプレス (男性)
- フルギア ベンチプレス (女性)
- ノーギア ベンチプレス (男性)
- ノーギア ベンチプレス (女性)
のそれぞれについて異なるものが設定されています。

このIPFスコアは2019年からウィルクススコアに置き換わる形で使われ始めました。
補足
IPFスコアにはベンチプレス向けの定数以外にもスクワット向け、デッドリフト向けの定数もあります。フルギアベンチの200kgとノーギアデッドリフトの200kgを比べられるということです。
IPFスコアの改良 (IPF GL)

実は、IPFスコアは1年くらいで改良されています。精度が悪かったためです。
また、精度の悪いIPFスコアに反発するような形で
- Wilks 2.0
- DOTS Method
などが立て続けに発案されました。
Wilks 2.0
もともとのウィルクススコアをより平等になるように改良したもの
DOTS Method
ドイツのTim Konertz氏によって提唱された全く新しいもの。Dynamic Objective Team rating Systemの頭文字を取っている。


2020年以降は、
- 最も正確なのがIPF GL Pointsである
という前提のもとでIPFは、GL Pointsを推奨していますが、実態としてはDOTSを使い続けている団体もあります。
IPF GLの式は以下のようになっています。

こちらもIPFスコア同様に定数であるA, B, Cは種目に応じて8通り存在します。
IPFの主張の根拠を詳しく知りたい方は以下のページをご参照ください。
前提にトップ選手が等しく努力して限界に到達しているという考え方があります。そのうえで、できるだけバラつきが小さくになるように数式が作られます。実際には、個体差や技術の差がありますので、積極的に比べるのを好まない人もいます。
一般人が使うには?

割合で言うと国際大会に出たことがない方が圧倒的に多いので、この点についても触れておきます。
トップリフターにとっても目安ですので、一般人にとってはなおさら目安でしかないです。その前提のもとで読んでください。
検証の手順
STEP 1 基準値を決める
STEP 2 各スコアを計算してみる
STEP 3 トップリフターとの差を考える

STEP 1 基準値を決める
今回の基準値はAthleteBodyさんが提唱する相対筋力スコアをもとに決めてみました。
相対筋力スコアについては
- 40 (トレーニング歴 半年くらい)
- 55 (トレーニング歴 1年くらい)
- 70 (トレーニング歴 2年くらい )
のようなイメージです。
これを
- 体重 60 kg
- 体重 70 kg
- 体重 80 kg
- 体重 90 kg
について算出します。
BIG3のTotalは以下のようになりました。
スコア 40 | スコア 55 | スコア 70 | |
---|---|---|---|
体重 60kg | 217 | 298 | 379 |
体重 70kg | 241 | 331 | 422 |
体重 80kg | 264 | 363 | 462 |
体重 90kg | 286 | 393 | 500 |
STEP 2 各スコアを計算してみる
これを各スコアについて考えてみるとざっくり以下のようになります。

注意してほしいのが、
- Wilksの値は÷5している
- Wilks 2.0の値は÷6している
- IPFの値は÷8している
ことです。
スコアごとにスケールが違うので割る数値を変えてざっくりスケールを合わせました。
STEP 3 トップリフターとの差を考える
少し小細工をしましたが全スコアについて以下のことが言えます。
- 世界記録はだいたい110くらい
- 日本記録はだいたい100くらい
つまりなにが言いたいかというと
- 日本のトップが100なので100目指してがんばろう
ということです。
割らなくても縮尺が合っているのであまり深く考えずにIPF GLスコアを使うのでよいかと思います。初期値が低めに出るので伸びも実感しやすいです。
計算ツールも用意しました。
注意
・一方的に他人と比べるのはやめてください。
・目安なのでいくつになったらどうとかはないです。
まとめ
パワーリフティングの強さを表すスコアについて紹介しました。
本記事のおさらい
世の中にあるスコア一覧
・相対筋力スコア
・IPF points
・Wilks 2.0
・DOTS Method
・IPF Good Lift points
2018年以降のスコアの変遷
2. IPFスコアが登場
3. すぐにIPF GLスコアに置き換わる
一般人が使うには?
最近は、GOAL-Bさんやパワーチューブさん主催のBIG3大会が開かれるなど、パワーリフティングがひそかな盛り上がりを見せています。
スコアも意識しながら目標設定してみてはいかがでしょうか。

参考
・DOTSについて
https://kraftsport-colonia.de/dots
・IPF スコアについて
https://www.britishpowerlifting.org
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