スコアがいろいろあって分からない
この記事ではウィルクススコアが廃止されIPF GLポイントが使われるようになった歴史を紹介します。大会によってはIPFポイントが2桁だったり3桁だったりしてよく分からないという方はぜひ読んでみてください。
パワーリフティングの強さを比較するスコア
まずはパワーリフティングのスコアについて以下の2点を紹介します。
- スコアの種類
- スコアの年表
パワーリフティングのスコアの種類
日本の大会では基本的にIPF GLポイントに統一されつつあります。
パワーリフティングのスコア年表
歴史をまとめると以下のようになります。これらを時系列に沿って紹介していきます。
ウィルクススコアの時代
IPFスコアが誕生するが、その他のスコアも次々に登場
IPFスコアの改良版としてIPF GLが誕生
[スコアはどんな考え方で決めている?]
前提に「トップ選手が等しく努力して限界に到達している」という考え方があります。その前提で、どの記録からも平等にできるだけバラつきが小さくになるように数式が作られます。実際には、個体差や技術の差がありますので、積極的に比べるのを好まない人もいます。
ウィルクススコアはなぜIPFポイントに置き換わったか
長年ウィルクススコアが使われてきた
パワーリフティングの世界では長きにわたってウィルクススコアが使われてきました。このスコアが作られた背景には、異なる階級のリフターを比較して、どちらが優れたリフターなのかを決めたいという考えがあります。
ウィルクススコアとはオーストラリアのRobert Wilks氏によって作られたスコアのことです。ウィルクス係数 × 合計挙上量で求められます。
パワーリフティングはある意味、ボクシングのようなものですから、ライト級(59kg)とヘビー級(90kg)の選手を直接、殴り合いさせるにはいかないわけです。
なにか別の指標が必要になってくるよね
そこで使われていたのが、このウィルクススコアです。ただ、この方法にもいくつか問題点があったため、2018年には新しい物に置き換わりました。
ウィルクススコアの問題点は?
従来版のウィルクススコアはデータが古い
従来版のウィルクススコアでは1988年~1994年のデータを用いて数式を作成しています。
女性のデータが少ない
1988年~1994年のデータでは女性の競技者が少なかったため、正確性に欠けます。
競技別にスコアが分かれていない
以下の2つについて言えます。
- フルギア/ノーギアが分かれていない
- シングルベンチプレス向けにスコアが分かれていない
もう少し詳しく言うと?
ノーギア/フルギア
同じ性別/同じ体重の場合、ギアの有無にかかわらず以下は同じウィルクススコアとなってしまいます。
- 65kgの男性がノーギアでtotal 500kg
- 65kgの男性がフルギアでtotal 500kg
シングルベンチプレス
同様に以下も同じウィルクススコアとなってしまいます。
- 65kgのパワーリフターがBP 120kg
- 65kgのベンチプレッサーがBP 120kg
複数種目のなかで優れたリフターが決められないんだね!
【補足】
ベンチプレス専門の選手は同じ体重でも上半身に筋肉を割り振ることができるため有利となります。
中量級に不利である
ウィルクススコアのイメージ図を書くと以下のようになります。
線図がU字になっているということは真ん中の中量級の方々はスコアが低めに出てしまうということを意味しています。
IPFポイントの概要と計算方法
IPFポイントの立ち位置
ウィルクススコアの課題を整理すると以下の4点です。
- 最新データで近似曲線を作り直したい
- 女性のデータを増やしたい
- 種目別に係数を分けたい
- 中量級への不利さを改善したい
IPFスコアは上記の課題に加えて以下を追加して作成されました。
- トップリフターだけではなく、すべてのレベルのリフターも使える指標にしたい
IPFポイントの計算式
実際の数式は以下のようになります。
C1, C2, C3, C4は定数ですが8つの競技に対してそれぞれ異なるものが設定されています。
- フルギア 3種目 (男性)
- フルギア 3種目 (女性)
- ノーギア 3種目 (男性)
- ノーギア 3種目 (女性)
- フルギア ベンチプレス (男性)
- フルギア ベンチプレス (女性)
- ノーギア ベンチプレス (男性)
- ノーギア ベンチプレス (女性)
lnは自然対数だよ!
このIPFスコアは2019年からウィルクススコアに置き換わる形で使われ始めました。
【補足】
IPFスコアにはベンチプレス向けの定数以外にもスクワット向け、デッドリフト向けの定数もあります。フルギアベンチプレスの200kgとノーギアデッドリフトの200kgを比べられるということです。
IPF GLポイントの概要と計算方法
IPF GLポイントの立ち位置
もう変わっちゃったの?
実は、IPFスコアは1年くらいで改良されています。精度が悪かったためです。また、精度の悪いIPFスコアに反発するような形で立て続けに新しいスコアが考案されました。
- Wilks 2.0
- DOTS Method
Wilks 2.0
もともとのウィルクススコアをより平等になるように改良したもの
DOTS Method
ドイツのTim Konertz氏によって提唱された全く新しいもの。Dynamic Objective Team rating Systemの頭文字を取っている。
オリンピックでいうとIOCにJOCが反発してる感じ!
最終的にはどうなったの?
2020年以降、「最も正確なのがIPF GL Pointsである」という前提のもとIPFからはGL Pointsが推奨されています。ただ、国によっては国内や地方の大会ではDOTSなど別のスコアを使い続けていることもあります。
【参考】
IPFの主張の根拠を知りたい方は以下のページをご参照ください。
IPF GLポイントの計算式
IPF GLの式は以下のようになっています。
こちらもIPFスコア同様に定数であるA, B, Cは種目に応じて8通り存在します。
まとめ
パワーリフティングの強さを表すスコアについて紹介しました。
世の中にあるスコア一覧
- Wilks points
- 相対筋力スコア
- IPF points
- Wilks 2.0
- DOTS Method
- IPF Good Lift points
2018年以降のスコアの変遷
- ウィルクススコア
- IPFスコアが登場
- すぐにIPF GLに置き換わる
最近は、GOAL-Bさんやパワーチューブさん主催のBIG3大会が開かれるなど、パワーリフティングがひそかな盛り上がりを見せています。スコアも意識しながら目標設定してみてはいかがでしょうか。